燈火小島の「特撮2次創作」の小説群。原作・制作者様とは無関係。勝手な空想の産物です。
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お題配布サイト「追憶の苑」さんから、お題を借りてきました。特撮系とオリジナルでこなしていこうと思います。燈火島時代にアップしていたものも、いくつかサルベージ予定。
02:君を忘れられない
(DCD/第5話終了後/ワタル、バッシャー)
小野寺に会いたいワタル。
02:君を忘れられない
(DCD/第5話終了後/ワタル、バッシャー)
小野寺に会いたいワタル。
気分が晴れないわけではない。だが、決して明るくはない。
花曇りの空を見上げ、ワタルは小さくため息をつく。テーブルに突っ伏したかったが、あまりに情けないように思えてさすがにやめた。
あれから光写真館へと何度か行ってみたが、なぜか、そこにあったのは、レトロで黒光りする木材を多く使ったシックな喫茶店で、探していた彼らの姿はなかった。
小野寺はどこへ行ってしまったのだろう。行きたいところがあれば、いつでも連れていってくれると言ったのに。
彼が約束を破る人間とは思えなかった。彼には彼の事情があって、それはきっと、あの門矢と一緒にいることに起因するのだろうと思った。彼は優しいから、門矢のことも放っておけないのかも知れない。
でも。
「会いたい……な」
ぽつりとつぶやきをもらすと、観葉植物に水をやっていたバッシャーが振り返った。
そう。
ビートルファンガイアに吸収され、キバとディケイドの必殺技でともに砕けたと思っていたアームドモンスターたちが、門矢たちの不在を知ったその日に、ひょっこり帰ってきたのだ。
彼らの記憶からは、門矢たちのことがすっぽりと抜けていた。話を振ってみても、ガルルはそんな人がいただろうかと首を傾げ、バッシャーは探してみようかと首をひねり、ドッガには聞き流された。
ちなみに、ビショップはなぜか戻ってこない。
古びた洋館で暮らすには、ドッガはあまりにも大きすぎて、彼だけはキャッスルドランにこもっている。ガルルは洋館とキャッスルドランを往復する日々で、小さなバッシャーだけが、洋館に滞在していた。
護衛というのがその名目だが、今のところ、平穏な日々が続いている。
いや、ワタルがそう思っているだけで、バッシャーはちゃんとその役割を果たしているのかも知れない。彼の感覚はファンガイアやガルルたちと比べても、圧倒的に鋭敏だ。ワタルが気づく前に、敵やその可能性のあるものに、会いに行ったこともあるかも知れない。
バッシャーが手のひらから注ぎかけていた水滴が止まる。瞬かれた真っ赤な瞳には、友愛の感情があった。
「会いたい人がいるんだね」
「……ああ」
「僕も知ってる人?」
「知ってたはずだ」
「……ふーん、壊れてまた戻ってきたときに抜けちゃったのかな」
「かもな……」
違和感に軽く目を細める。カーテンをまくり上げ、葉に淡い陽光を浴びさせているバッシャーの後ろ姿は、いつもと変わらない。
動くたびぴちぴちと揺れるひれも、いつもと変わりない。
「また来てくれるといいね。お城がすごく明るかったもんね」
ワタルは瞠目する。
「お前……覚えてる、のか……?」
「覚えてないよ、たぶん」
バッシャーはあっけらかんと言った。小首を傾げ、振り返る。
「王様が会いたい人で、僕も知ってたはずの人、なんでしょ?」
「ああ。ユウスケだ。小野寺ユウスケ」
「知らない人だ」
「じゃあ、なぜ?」
「僕は前の王様に吸収されたはずなのに、ここにいる。解放されるはずないし、なんか記憶も飛んでるし。いったん壊れてから戻ってきたのかなーって」
「それだけ、で……?」
「ううん。寂しそうで、すごく暖かそうで……優しかったから。きっと、お城も明るくて、楽しかったんじゃないかなって。そう思っただけ」
何なんだこいつは、というのが、ワタルの正直な感想だった。感覚が鋭い奴というのは、どこかの回路が意外なリンクをしているんじゃないのか。
もしくは壊れてるんじゃないのか。
鋭いにもほどがある。
自分が同じような事態になったとき、同じように考えが及ぶかどうか、自信がなかった。いや、自信がない以前に無理だろう、たぶん。
すぐに「自分が壊れた」と考えつくのもおそろしい。死んでまた再構築された――もしくは、再生した。物騒な考えだ。そこに一瞬で思い至る思考が、あっさりと受け入れてしまう感受性が、いまいちよくわからない。
自分がハーフだからだろうか、と、いらないところで後ろ向きになりかける。
こぼれたため息は、思いがけずしめったものになった。何を思ったか、バッシャーはひらひらとひれを揺らしながら階下へ消えていく。
ふと目に留まったのは、テーブルの上の小箱にそっとしまいこんだ、あざやかな飴の包み紙だった。全部食べてしまって、きれいな包装しか残っていない。
「はい、どうぞ」
不意に差し出されたのは、小さなものを包みこんだ、セロファンの集団だった。どうやら飴らしい。
青い包みは両端の大きさが少し違っているものが多い。紫のものは、曲がっていたり大きくずれて中身が見えそうなものもある。緑のものだけが、はみ出すこともずれることもなく、きれいにひねられている。
ワタルはぽかんとバッシャーを見上げた。
「これ……は……」
「飴だよ。大切に紙をしまってるから、好きなのかなーって。僕たちも作ってみたんだ」
ガルルが発案したんだよ、と歌うように言う。3人でキッチンに立って、小鍋をかき回したり、形を整えたり、セロファンを切ったりしたのだろうか。
城の者たちは相当驚いただろう。
ワタルだってびっくりだ。
ひとつを開けて口に入れる。舌でそっと転がすと、やわらかなミルクの味がした。
でも、彼からもらった飴の方が、ずっとも甘くて、やさしくて――あたたかかった。
ワタルの頬を細い涙が伝う。
ぼくはまたあなたにあえますか。
* * *
キバのバッシャーにしていいものか、DCDのバッシャーにすべきか悩んだ結果、何か両方を半端に取りこんだ雰囲気に。
飴の包み紙は、ちゃんと洗ったと思います。
花曇りの空を見上げ、ワタルは小さくため息をつく。テーブルに突っ伏したかったが、あまりに情けないように思えてさすがにやめた。
あれから光写真館へと何度か行ってみたが、なぜか、そこにあったのは、レトロで黒光りする木材を多く使ったシックな喫茶店で、探していた彼らの姿はなかった。
小野寺はどこへ行ってしまったのだろう。行きたいところがあれば、いつでも連れていってくれると言ったのに。
彼が約束を破る人間とは思えなかった。彼には彼の事情があって、それはきっと、あの門矢と一緒にいることに起因するのだろうと思った。彼は優しいから、門矢のことも放っておけないのかも知れない。
でも。
「会いたい……な」
ぽつりとつぶやきをもらすと、観葉植物に水をやっていたバッシャーが振り返った。
そう。
ビートルファンガイアに吸収され、キバとディケイドの必殺技でともに砕けたと思っていたアームドモンスターたちが、門矢たちの不在を知ったその日に、ひょっこり帰ってきたのだ。
彼らの記憶からは、門矢たちのことがすっぽりと抜けていた。話を振ってみても、ガルルはそんな人がいただろうかと首を傾げ、バッシャーは探してみようかと首をひねり、ドッガには聞き流された。
ちなみに、ビショップはなぜか戻ってこない。
古びた洋館で暮らすには、ドッガはあまりにも大きすぎて、彼だけはキャッスルドランにこもっている。ガルルは洋館とキャッスルドランを往復する日々で、小さなバッシャーだけが、洋館に滞在していた。
護衛というのがその名目だが、今のところ、平穏な日々が続いている。
いや、ワタルがそう思っているだけで、バッシャーはちゃんとその役割を果たしているのかも知れない。彼の感覚はファンガイアやガルルたちと比べても、圧倒的に鋭敏だ。ワタルが気づく前に、敵やその可能性のあるものに、会いに行ったこともあるかも知れない。
バッシャーが手のひらから注ぎかけていた水滴が止まる。瞬かれた真っ赤な瞳には、友愛の感情があった。
「会いたい人がいるんだね」
「……ああ」
「僕も知ってる人?」
「知ってたはずだ」
「……ふーん、壊れてまた戻ってきたときに抜けちゃったのかな」
「かもな……」
違和感に軽く目を細める。カーテンをまくり上げ、葉に淡い陽光を浴びさせているバッシャーの後ろ姿は、いつもと変わらない。
動くたびぴちぴちと揺れるひれも、いつもと変わりない。
「また来てくれるといいね。お城がすごく明るかったもんね」
ワタルは瞠目する。
「お前……覚えてる、のか……?」
「覚えてないよ、たぶん」
バッシャーはあっけらかんと言った。小首を傾げ、振り返る。
「王様が会いたい人で、僕も知ってたはずの人、なんでしょ?」
「ああ。ユウスケだ。小野寺ユウスケ」
「知らない人だ」
「じゃあ、なぜ?」
「僕は前の王様に吸収されたはずなのに、ここにいる。解放されるはずないし、なんか記憶も飛んでるし。いったん壊れてから戻ってきたのかなーって」
「それだけ、で……?」
「ううん。寂しそうで、すごく暖かそうで……優しかったから。きっと、お城も明るくて、楽しかったんじゃないかなって。そう思っただけ」
何なんだこいつは、というのが、ワタルの正直な感想だった。感覚が鋭い奴というのは、どこかの回路が意外なリンクをしているんじゃないのか。
もしくは壊れてるんじゃないのか。
鋭いにもほどがある。
自分が同じような事態になったとき、同じように考えが及ぶかどうか、自信がなかった。いや、自信がない以前に無理だろう、たぶん。
すぐに「自分が壊れた」と考えつくのもおそろしい。死んでまた再構築された――もしくは、再生した。物騒な考えだ。そこに一瞬で思い至る思考が、あっさりと受け入れてしまう感受性が、いまいちよくわからない。
自分がハーフだからだろうか、と、いらないところで後ろ向きになりかける。
こぼれたため息は、思いがけずしめったものになった。何を思ったか、バッシャーはひらひらとひれを揺らしながら階下へ消えていく。
ふと目に留まったのは、テーブルの上の小箱にそっとしまいこんだ、あざやかな飴の包み紙だった。全部食べてしまって、きれいな包装しか残っていない。
「はい、どうぞ」
不意に差し出されたのは、小さなものを包みこんだ、セロファンの集団だった。どうやら飴らしい。
青い包みは両端の大きさが少し違っているものが多い。紫のものは、曲がっていたり大きくずれて中身が見えそうなものもある。緑のものだけが、はみ出すこともずれることもなく、きれいにひねられている。
ワタルはぽかんとバッシャーを見上げた。
「これ……は……」
「飴だよ。大切に紙をしまってるから、好きなのかなーって。僕たちも作ってみたんだ」
ガルルが発案したんだよ、と歌うように言う。3人でキッチンに立って、小鍋をかき回したり、形を整えたり、セロファンを切ったりしたのだろうか。
城の者たちは相当驚いただろう。
ワタルだってびっくりだ。
ひとつを開けて口に入れる。舌でそっと転がすと、やわらかなミルクの味がした。
でも、彼からもらった飴の方が、ずっとも甘くて、やさしくて――あたたかかった。
ワタルの頬を細い涙が伝う。
ぼくはまたあなたにあえますか。
* * *
キバのバッシャーにしていいものか、DCDのバッシャーにすべきか悩んだ結果、何か両方を半端に取りこんだ雰囲気に。
飴の包み紙は、ちゃんと洗ったと思います。
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