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17:死に損ないの身体
(仮面ライダー響鬼/第44話終了後)
ザンキさんメイン。独白調。
返魂の術。死後も魂を身体に留め、やがては外道へと腐り落ちていく外法。禁じられた呪術だ。
それを自らに施した。
悔いはない。これしかできることがない。戦う力は著しく低下し、浄めの現場でも足手まといにしかならない。
限界は近いだろう。
だから。
だから、禁呪と承知の上で術を施した。
腕に描いた呪を見下ろし、低く笑う。吉野に残る家族が――弟が見たら、何と言うだろう。禁呪をよく知る青年が知ったら、一体どんな顔をするだろう。ともに戦ってきた鬼たちは、一体何を思うだろう。軽蔑するだろうか。嫌悪されるだろうか。
願わくは、それがトドロキに向かぬように。
目覚めた時、己が死したことを知った。体がきしむ。ゆっくりと起きあがる。
ふと見ると、側には烈風が投げ出されていた。
威吹鬼が看取ってくれたのか。鬼として生まれ、鬼として育てられたイブキが、大切な音撃管を置き去りにするほど、とり乱してくれたのか。
彼でよかったと、なぜか思った。わずかな笑みが浮かぶ。
ザンキは死んだ。意識の残滓が執着する肉体は、転げるように邪道へと落ちていくだけ。時間はない。再びの目覚めは、もう2度とない。
残されたわずかの時間で、必ずトドロキを救ってみせる。
それが、師としてできる最後のこと。
できれば、彼自身の手で鬼払いはさせたくない。だから、わずかな時間も無駄遣いはできない。
意を決し、歩き出す。
「俺は死なん……まだ、死ねない」
裸足だというのに、踏みしめた河原の感覚は、まったく感じられなかった。
* * *
燈火島よりサルベージ。